前の記事で、中小企業では声の大きい人の意見が通る、ということを書きました(「大声をあげる人が勝つ」参照)が、社内で自分の意見を通して思い通りにコントロールする方法がもう一つあります。
それが昇進です。
昇進といっても、平社員から課長に上がった程度では何の特権もありません。
建前では権限があるかのようになっていますが、実質的には中間管理職の最底辺に位置しており、その位置で自分の思い通りにコントロールできるようになることはほとんどありません。
部署の中で思い通りにやりたいのであれば、部長まで昇進する必要があるし、もっと広い範囲で思い通りに振る舞いたければ、それに見合った地位を手に入れる必要があります。
今回はそういう話です。
なぜ上りつめればやりたい放題できるのかというと、周りに阻止できる人がいなくなるからです。
自分に比肩する権力や能力を持つ人がいなければ、文句を言われにくくなります。
たとえ文句を言われたとしても、権力をちらつかせたり、「それならばあなたがやりなさい」と言ってしまえば、相手を黙らせることができてしまいます。
もちろん、やりたい放題とはいっても、それは仕事の上でです。
実のところ、仕事の範疇をはみ出してしまっても、最高レベルの人事権を持っていれば、好き放題やれるのですが、その人の力が弱まってきたり、代わりの人が現れたら、あっという間に引きずりおろされることでしょう。
ですから、ここでいう「やりたい放題やる人」というのは、実績も残してきていて、「あの人がいないと困るな」と思われるような働きぶりをしている人でもあります。
さて、上りつめ方にも2種類あります。
地位で上りつめる場合と、専門知識で上りつめる場合です。
役職がどんどんあがっていく、ということです。
課長よりは次長、次長よりは部長、部長よりは本部長…という具合に、地位が上がれば上がるほど文句を言われにくくなり、命令を下しやすくなっていきます。
ところで、どんな地位にあったとしても性格が弱い人の場合には、仕事において問題があれば、平社員ですら面と向かって文句を言ったり批判をしたりすることがあります。
気が弱ければ彼らの言い分を、即座に取り入れるでしょう。
しかし、上に上りつめた人というのは、殆どの人が頑固です。
自分よりも地位が低い人に言いこめられることは面白くないし、プライドが許さないので、何かと理由をつけて文句を言ってきた人を論破しにかかります。
論破できなかったとしても、これ以上文句を言うのは得策ではないなと匂わせることで、引きさがるように仕向けます。
このタイプは、やりたくない面倒な仕事を買って出たり、専門性の高い知識を要する業務を一手に引き受けたりする人のことです。
周りの人は自分でやりたくないし、他にそのようなことができる人を知らないので、頼らざるを得なくなります。
専門知識の高い人はアドバイザーとしても重宝されます。
彼しか知らないわけですから、彼に聞くしかありません。
ポイントは、専門性が高いだけでなく、仕事はしっかりとあげること、他にやりたいと思う人がいない仕事をやっている、ということです。
こういう人も、やりたい放題できる可能性はありますが、それはあくまでも自分の仕事の範囲内です。
自分の仕事の範疇を超えて好き勝手やることは、部署がそもそも限定されているので不可能です。
また、やりすぎて上から目を付けられた場合、その人がいなくなると困ることを承知で異動させることもあり得ます。
その場合、経営者は外部から人を補填しようとするでしょう。
以上のパターンは、複合している場合もあります。
例えば専門知識が高くて部長レベル、になっているとすれば、役員レベルの人に嫌われて報復人事でも受けない限り、好き放題できることになります。
報復人事の心配さえほぼなくなる役職は役員です。
専門知識のある役員はかなり厄介になります。
彼らは、自分がその分野においては社内で最も詳しいと考える傾向にあります。
また、最も詳しくないとしても、専門性は高いので、その分野の案件があれば必ず首を突っ込んできます。
社員がした素晴らしい提案を、何かと理由をつけて自分の考えに塗り替え、彼の描いた素晴らしいアイディアを陳腐なものに変えてしまうか、アイディア自体を寝かせてしまうこともあります。
このサイトでは、平穏無事に社会人生活を送ることがテーマですから、あなたが上りつめることを想定しているわけではありません(上りつめるのはあなた次第ですが)。
中小企業には、上りつめた結果、好き放題に仕事をしている人がよくいる、ということです。
あなたはこういう人ともうまくやっていかなければなりません。
しかし、うまくやっていくということは、時として彼らの好き放題に巻き込まれることもあるということです。
そのときに、ストレスを感じてしまうかもしれません。
できるだけストレスを感じないためには、周りの人を巻き込むか、あなたの能力をもう一段レベルアップさせるか、いずれにしても努力は必要になってきます。