会社、特に中小企業というのは、悪がはびこりやすい場所でもあります。
正しいことをしていれば、必ず誰かが見ていてくれて、悪い人がいてもその人は駆逐されて、いつか自分はきっと報われる。
そんなドラマのような出来事は実際にはあまり起こりません。
会社は言ってみれば、小さな国家です。
会社役員とは、政治家のようなものです。
自分の意見を通すために裏から手を回したり、事前に話を通しておいたり、ばれないように不正を働いたり…。
そういった権力者に擦り寄ったものが勝つ仕組みになっているのです。
権力者はどういった行動に出るかというのは、独裁政権の国家をみればわかります。
自分の考えこそが正しいと思い、反対する者を排除します。
また、自分の意にそぐわない行動をする者も遠ざけます。
そして、自分に服従する者を寵愛します。
そこでは、不正がまかり通るのが当たり前です。
自分たちの懐さえ潤えば、あとはどうでもいいのです。
中小企業においては、そこまでスケールが大きくはなりませんが、同じような行動をすると考えていいでしょう。
会社には様々な人がいますが、権力者から見た社員のタイプは以下の3つに集約されます。
いわゆるごますりタイプです。
彼らはうまく立ち回って権力者が気に入るようなことばかりをします。
会社員でいる限り、権力者に気に入られようとするべきです。
しかし、あまりにも裏表があるのは、それを見ている他の人から信用されなくなります。
周りから見れば、「すりよっている」様が、あからさまなだけに、信用できない人物としてチェックしておくことはたやすいでしょう。
しかし、このタイプの人は八方美人であろうとするので、ひとたび話をしてみると「なんだ、結構いい人じゃないか」と勘違いしてしまうことがあります。
おだてたり、へりくだったりして、相手を気持ちよくさせているように見えて、その人がいないところで、その日との陰口を言うような人は、まさにこのタイプです。
ゴマの摺り方は、相手をおだてるだけでなく、「自分はダメだ、あなたはやはりすごい」という褒め方をします。
また、仕事で何かあると、「わたしがやっておきます」「わたしがやりました」とアピールすることを忘れません。
権力者にたてつくタイプです。
頭の固い人、自分なりの仕事論を持っている人に多く、よく「権利」を振りかざして文句を言います。
彼らは権利を主張するあまり、仕事に支障をきたしても、自分は悪くないと信じています。
仕事がうまく回らないのは、自分を使いこなせない管理職が悪いのだと考えています。
こういった人は、端から見ている人も「困った人」「使えない人」「面倒な人」という印象を持っています。
立場による擦れ違いや摩擦によって、他の部署からは嫌われていても、同じ部署の中では空かれている人も、よくいますが、同じ部署内で嫌われている人というのは、間違いなく、他の部署も含め、多くの人から嫌われています。
可愛くも憎らしくもない社員、つまり、そこまで関わっていない社員のことです。
権力者にとっては従業員の殆どの人はこのタイプに類するのではないでしょうか。
このタイプの人は、特に問題を起こすわけでもなく、かといってものすごく仕事ができるわけでもありません。
平均的で目立たない存在で、特に問題があるとは思えないので、放っておかれています。
しかし、権力者から好かれているわけではないので、気まぐれでとばっちりを受けて異動の対象になることがあります。
そういう意味では、安定感のあるポジションとはいいにくい立場です。
さて、以上3つのタイプで生き残る人とは、「自分に擦り寄ってくる可愛い社員」と「そのどちらでもない空気のような存在の社員」の2つです。
「自分の意にそぐわない憎らしい社員」は、目をつけているので、隙さえあれば、いえ、隙などなくてもその社員が苦手な部署に追いやったり、窓際族にしたりして、やる気をなくさせ、会社を辞める方向に誘います。
ここで問題なのは、「自分に擦り寄ってくる社員」が「あいつはダメなやつだから飛ばした方がいい」と「空気のような存在の社員」について悪口をいう場合です。
自分の居場所の確保や、昇進のためだけに、権力者におもねっているのであれば、周りにとってあまり害はないのですが、ひとたびこのタイプの人に嫌われると、権力者に「あいつはダメなやつだから、飛ばした方がいい」というニュアンスの進言をし始めます。
いくら嫌っているとはいえ、普通の人であれば、実際にある欠点や失敗を告げ口するという方法で陥れようとします。
しかし、このタイプの人の中には、根も葉もない嘘を吹き込んで、権力者に信じ込ませようとする人がいます。
まさに「悪」そのものです。
たちが悪いのは、どんなにあからさまな嘘だったとしても、気に入られている限りは、その嘘は通ってしまい、あなたが悪いことをしていなくても権力者から嫌われることになるということです。
正義が勝つ、というテレビドラマのような展開は待っていないのです。
こういった「悪人」社員に出会ってしまったら、どのように対処すればいいのでしょうか。
悪人社員が社内にいた場合、彼から自分の身を守るための行動として、以下の3つのパターンが考えられます。
まず、仲良くしてしまうという方法があります。
仲良くしている分には、こちらに害を与える存在にはなりません。
誰かの悪口を一緒になって聞いたり話したりしていればいいのです。
飲みに行くのも手です。
ただし悪人と仲良くすることはリスクを伴うことも理解しておきましょう。
まず、うっかり悪人の気に入らないことをしてしまうと、逆に攻撃対象になってしまいます。
また、悪人は仕事がいい加減であることが多く、そのいい加減さを指摘しても、攻撃対象になってしまいます。
だから一緒に働く相手だとしたら、かなりつらいことになります。
そういう仕事のできない面もすべて受け入れてサポートし、悪人が楽をし続けるという構図になることを承知でやっていける、という人のみが悪人と仲良くできます。
悪事を指摘し、完全勝利をめざす方法です。
この方法を選ぶには、それなりの力が必要になります。
相手は悪人ですから、周りの平社員はもとより、管理職や役員までも平気でだまして自分の味方につけようとします。
それだけではなく、時には取引先の人までも巻き込んで、取引先からあなたの苦情が会社に入るように手配することもあります。
悪人にとっては、会社の業績よりも、今、自分がどう見られるかのほうが優先順位がはるかに高いのです。
こういう人と全面対決するには、自分も周りの人を味方につけ、相手の味方を減らして立場を弱くするという、ある種、陣取り合戦の構図に勝つ必要があります。
相手はなりふり構いませんから、あなたが体裁を気にしていたら、どんどん付け入ってきます。
そして、あなたが相手に負けまいとして、なりふり構わずに行動すると、今度は「あの人はおかしい」と当事者以外の人から悪評が立つ可能性もでてきます。
平穏無事に仕事生活を送りたいあなたは、そこまでのリスクを冒してまで、全面戦争に持ち込みたいでしょうか。
最もいい付き合い方は、常に相手と一定の距離を置き、つかず離れずにいることです。
つきすぎても離れすぎても、悪口の対象にされることがあるということです。
あなたは相手の攻撃圏内に入らず、仕事の話があるときだけ無難にこなし、ちょとした雑談程度には一言二言会話をして、そつない関係を作っておくことです。
そして、少しでも深みにはまりそうなときは、アハハと愛想笑いをして、あまり取り合わないことです。
ちょっとターゲット化しそうな雰囲気があれば、適度に相手の仕事ぶりや人格を褒めておきましょう。
嘘でもいいのです。
どうせそこまで見抜く力など持っていません。
ほめておけば、「この人は敵ではないな」と単純に思います。
この「この人は敵ではないな」という距離感を大事にしましょう。
「この人は仲間だ」では、近すぎます。
以上の努力むなしく、悪口のターゲットにされてしまった場合、あなたがとる行動は一つです。
とにかく、自分はそのような悪口の対象となるようなことはしていない、というアピールを周りにすることです。
このアピールには、普段の行いが強く影響します。
普段から、遅刻をせず、仕事を堅実にこなし、こなすだけでなくより高い成果を上げるべく努力したり、周りの人と仲良く話をしたりしている、という姿勢を見せていれば、管理職を含む周りの人はあなたを高く評価します。
高く評価されるためには、まじめに仕事をして、その結果が評価されることを待っているだけではいけません。
自分が達成した素晴らしい成果については、さりげなく、それでいてしっかりとアピールして、誰のおかげでその成果があがっているのかを知らしめておきましょう。
そして、「あの人は仕事ができる」という一定の評価を皆が共有していれば、たとえ悪口を一人の悪人が流したところで、それを聞いた人は「君は何を言っているんだ、あの人がそんなことをするわけないだろう」と言ってくれるでしょう。
また、あなたが「あの人が私の悪口を言っていて迷惑している」と飲み屋で愚痴でもこぼそうものなら、すぐに同情を集めて、味方になってくれるでしょう。
周りの人の信頼を得ておくことは、最大の防御になりえます。