人を採用するときには、書類選考や筆記試験がない場合がありますが、必ず行う試験は面接です。
応募者がどのような人であるのかは、会って話さないとわかりません。
話し方や態度、振る舞い方などを総合的に確認するには、直接会って話すことです。
そういったものは付け焼刃で演技できるものではありません。
普段の振る舞いがそこに現れてしまうのです。
面接官は、質問に対する答えを吟味するだけではなく、答えているときの話し方や声色、緊張の度合い、目線など、あらゆる情報を観察し、どんな人物であるのかを想像しなければなりません。
それが最終的には一番信頼できる情報であることもあるのです。
さて、それでは面接中にどこを重点的に見ればよいのか、以下で述べていきます。
もちろん、これ以外にも会社によって見るポイントがあると思います。
ここでは一般的なものだけあげておきますので、必要に応じてその他のみるべきポイントも加えておきましょう。
まず最初に目に入ってくる情報をチェックしましょう。
それは身だしなみです。
あなたの目に最初に入ってくる情報は、第一印象を決めるものです。
つまり、顧客や取引先にとっても第一印象となる、ということです。
仕事においては、第一印象は非常に重要です。
どんな人物なのかわからない状況では、最初に嫌われてしまうと、その後のやりとりが難しくなってしまうのです。
ここで感じた第一印象は、他の人も感じるものとしてとらえておきましょう。
それがあまりにもひどいものであるならば、採用を見送る理由になります。
服装は、特にこちらが指定していなければ、スーツを着てくるのが基本です。
スーツを着ているか否か、スーツであっても勝手にクールビズにしていることも時として問題視できます。
職種においてはクールビズでも許されない場合があるからです。
また、スーツにしわやほつれ、破れがある場合にも問題があります。
これはワイシャツも同様です。
これらの服装は、高価なものを身につける必要はありません。
きちんとアイロンをかけたり、手入れをしていればいいのです。
もしそいった手入れを怠っていれば、それは不潔に見えてしまいます。
不潔に見えれば相手に不快感を与えます。
不潔でも平気でいるような人は、相手への思いやりが欠如していると言わざるを得ません。
靴も同様で、革靴であるのは当然です。
底が破けていたり、ボロボロの靴を履いているのも問題があります。
若ければ気にしないかもしれませんが、革靴は磨いてあればポイントは高いでしょう。
顔をきちんと洗っているか、目ヤニがついていないか、歯を磨いているか(口臭がきつくないか)、髪形はきちんと整えているかをチェックしましょう。
髪形は、伸ばしすぎたり色を染めていたり脱色しているのも、会社によってはマイナスポイントになります。
あなたの会社なりの指針を決めておきましょう。
ここでもポイントは清潔感です。
爪をきちんと切っているか、汚れていないかも重要です。
また、体臭がきついのも体質とはいえ、相手を不快にするという意味では、採用を見送る理由になる会社もあるでしょう。
時計をつけているか、ベルトや鞄だけ変にカジュアルでないか、というようなことです。
カジュアルすぎるものを身につけているのは、こういう大事な場面で適当な格好をしてしまうということです。
つまり空気を読まずに行動するということですので、問題のある行動をする可能性があります。
人と話す時にきちんと目を合わせて話すことができるか、ということです。話をするときに目を合わせないのは失礼に当たります。
特に目上の人と話をするときに目を合わせることができないようでは、仕事に差し支えます。
このような人は、極度に憶病だったり、自分に自信がなかったり、反抗的であったりします。
話し方・言葉遣いが悪い人は、取引先や顧客とトラブルを起こす可能性があります。
このようなスキルは会社に入ってから覚えるものではなく、元々備わっているものです。
ですから、面接の時点で気になるような話し方であれば、それは直ることはないと考えてください。
敬語を使えるか言葉の端々に気になるところはないかチェックしましょう。
それとともに、声が小さすぎないかも確認しておきましょう。
測りかねるのであれば、わざと騒音のするところで話をして、声が聞こえるかテストしてもいいでしょう。
また、極端に話が長かったり、無口すぎたり、自分の主張がありすぎたりなさすぎたりするのも問題があります。
どの程度がいいかは、各社で最適な分量を考える必要があります。
ある一方に偏りすぎているということはいいことではないのです。
適度な緊張感を持って臨んでいるか、なおかつ落ち着いているか、ということもチェックしておきましょう。
緊張感がないことは一概に悪いことではありません。
人によっては大物だと好むこともあります。
しかし、このような人は従順ではなく、自分の我を押し通そうとして反抗することもあります。
どのような考え方で行動する人なのか、しっかりと見定める必要があります。
緊張しすぎる人もいただけません。
大事な場面で大きな失敗をしたり、何もしなかったりするかもしれません。
また、緊張でがちがちに見えるけど、言うべきことは言う、という人だと頼もしい人に映るかもしれませんが、これも時と場合によりけりです。
過度のストレス下において、ひるまずに自己主張を展開できる人は、自分を曲げない頑固な一面を持っていることがあるからです。
可愛げがあるかないか、というのは完全に面接官個人の感覚が左右します。
可愛げのある人は、どこか憎めない要素を持っています。
ミスはするけど反抗的ではありません。
ミスをする人と、反抗する人では、仕事において扱いにくいのは後者です。
後者は、問題を起こしたときに、屁理屈をこねまわして反抗し、自分のミスを認めようとしません。
しかし、ミスをして素直に謝る人は可愛げがあると思われるため、時には好かれる要素になります。
これまでは外見的なチェックについて述べてきました。
ここからは、質問をぶつけて、どのような考えを持っているのか、その答えた内容から判断していきます。
とはいえ、志望動機や退職理由など、履歴書を見てできる質問に対する答えは、応募者側も予めシミュレートしてきているでしょうから、アラを探すように掘り下げて質問をしないと本質的なものは見えてこないかもしれません。
面接で必ずと言っていいほど聞く質問は志望動機です。
履歴書に書いてあるから聞かなくていい、というような会社はないでしょう。
志望動機の答えとして、どこの会社でも通用するような概念的なことを答える人がいます。
つまり、「業界全体に興味をもっており、その業界に属する御社で働きたい」という主旨のものです。
応募者としては幾つもの会社を受けているので、あなたの会社にどうしても入りたいとは思っていないかもしれません。
あなたの会社が業界最大手でなければ、その可能性は高いと考えてください。
要するに、最大手に入れないのであれば、どこの会社でもいい、ということになります。
しかし、雇う側はどうでしょうか。
必要な人材は「この会社で働きたい」という意欲のある人です。
雇ってくれるならばどこでもいい、というような人は、とにかく職に就きたいという意志は強いので、最初はまじめに働くかもしれません。
しかし、どこでもよかったということは、「この会社は違うかもしれない」と、働いているうちに思う可能性もあるということです。
つまり気分次第ですぐに辞めてしまうかもしれないということです。
ですから、志望動機としては「どうしてもこの会社で働きたい、その理由は…」と、あなたの会社に特化した内容でなければなりません。
そして、その内容に面接官自身が納得できなければ、大した志望動機ではないと判断して構いません。
志望動機を確認するときに、業界の勉強をよくしていきているか、業界のことをよく知っているか、あなたの会社の研究をよくしているか、ということも気にしておきましょう。
きちんと勉強していれば、意欲的であると言えるからです。
「あなたがこの会社で生かせる能力は何ですか」という質問です。
会社として、必要な能力が既に決まっているとしても、まずはそういう情報を与えずに、どのような能力があるのか、漠然と聞いてみましょう。
この答えにより、この会社に勤めるにあたり、必要な能力が何であるのか、理解しているかどうかも知ることができます。
まったく見当違いのことを言っていたら、それは勉強不足になります。
また、どこの会社でも通るような一般的なこと(想像力、企画力、協調性)しか言わないのであれば、もっと具体例を出させたり、あなたが必要としている能力を挙げて、それについてどうこたえるかを見てみたりしましょう。
この質問によって、本人が自信があるといったスキルに関しては、後日、確認のための試験を行ってもいいでしょう。
時間がなければ、その場でちょっとした確認テストをやっても構いません。
その答え如何で本当にスキルを持っているか判断しましょう。
この質問はもちろん中途採用者に限ります。会社を辞めているということは、辞める理由があったはずです。
その理由がネガティブなものであれば、同じ理由であなたの会社も辞める可能性があります。
会社を辞める最大の理由は、人間関係を言われています。
嫌がらせを受けて腹を立てて辞めた、という理由であれば同情ができる面もありますが、人間関係をうまく構築できなかった理由は本人に問題があったからかもしれません。
人とうまくやっていくということは、それ自体がスキルであり、協調性を測る指針になります。
人間関係で辞めたということは、その協調性がないと言っているにも等しいのです。
人は自分に都合の悪い情報は隠すものです。
ですから、辞めた理由は本人に尋ねるとともに、できることならば、前の会社に連絡したり関係者に質問したりして、その話が本当であるのか確認すると間違いを減らすことができるでしょう。
多くの会社ではここまで調査しません。
しかし、この確認を怠ったために貧乏くじを引く可能性もあるのです。
会社を何度も辞めている人も要チェックです。
履歴書で確認できますが、嘘をついている可能性も否めません。
まず、2度以上会社を変えている人は、辞め癖がついていると考えられます。
それも短期間で辞めているのであれば、我慢強くもないし、利己的でわがままな仕事をする人と考えることもができます。
ちょっとでもやりたくない仕事を振られたら、指示を無視してやらなかったり、先輩より先に帰ろうとして注意されたら嫌気がさしたり、といった自分勝手な考えを持っていることがあります。
理想的な人は、5年以上同じ会社で仕事をしており、辞めたのは今回が初めて、という人です。
こういう人は中々現れないので、この条件にはまる人がいたら、その人はいい人かもしれないので、しっかりと吟味しましょう。
この質問も中途採用の人に向けたものです。
新卒であれば、いつから働くかと言えば、それは4月の最初の営業日からということになりからです。
この質問の答えとしては、前職をまだ辞めていない場合には、「引継ぎがあるので1か月後にしてほしい」というものでしょう。既に辞めている場合には、「明日からでも構いません」が正しい答えと考えましょう。
まだ会社を辞めていない人が、明日からでもすぐに働けると言った場合、責任感を疑いましょう。
また、どうしてもすぐに辞めたいような理由があるのかもしれません。
いずれにしても、会社への退職願を出してすぐに受理されることなどないので、「明日から」というのはまずできないはずです。
引継ぎをしないで次の会社に転職しようと考える人は、責任感がない人と考えた方がいいでしょう。
また、引継ぎをするほどの仕事をしていないというのであれば、それはそれで大したスキルを身につけていない人と考えましょう。
既に会社を辞めている人の場合、「明日からでもすぐに働きたい」という意思を見せず、「1か月後から」というような人は、働く意欲がないと考えられます。
また、失業保険狙いで遅らせるような人であれば、金銭面を相当気にする人とも考えられ、いずれにしても採用するのは控えた方がよさそうです。
以上のように、様々な質問をして、応募者と直接顔を突き合わせて、その空気を感じることができる面接は、その人の性格を肌で感じることができる貴重な時間です。
ですから、面接には時間をかけ、場合によっては2回・3回と繰り返して、本当に信頼に足る人物か、面倒くさがらずにきちんと対峙しましょう。