ホーム間違いのない採用活動術前職が同業種だった人は使えるか?
社員募集時に中途採用で応募してくる人の中には、前職が同じ業界の出身者のことがあります。
中小企業では、こういう人は即戦力として採用したがる傾向にあります。
実際、その業界を初めて経験する人よりも業界に精通しているのは間違いありません。
逆に、その業界にいたのに、何も業界に関することを知らないのであれば採用は見送るべきです。
では、前職が同じ業界で、業界のことを知っている経験者が本当に使える人なのでしょうか。
それは、前職をなぜ辞めたのかが重要なポイントになります。
ここで最も気にしたいのは、「なぜ前の会社を辞めて、同じ業界の別の会社に再就職したいと思っているのか?」ということです。
この理由がネガティブなものであれば採用は見送った方がいいでしょう。
この時点で、退職理由がポジティブであったりやむを得ないものであったりすれば、それは十分に採用を検討するに足る人材かもしれません(といっても中にはやはり使えない人もまぎれていますが)。
しかし、退職理由がポジティブであったりやむを得ないものであったりすることは滅多にありません。
採用担当者としては、退職理由がポジティブであったりやむを得ないものであったりする人が現れるまで採用を見送るか、それともネガティブな理由であっても一定程度理解を示せるものであるのか吟味するのかを、考えなければなりません。
人が会社を辞める最大の理由は人間関係だと言われています。
上司や先輩にひどい仕打ちを受けた辞めたり、周りに溶け込めなかったりして辞めるということです。
しかし、人間関係のもつれというものは、決して一方的なものではありません。
ですから、一方的な意見だけを聞いても真実は突き止められません。
ですから、人間関係に問題があり辞めざるを得なかった、というようなことを理由として述べるような人は、本人にも問題があるかもしれないと疑った方がいいでしょう。
また、人間関係のもつれのようなネガティブな退職理由は、大抵の場合は隠したがります。
これがあまりよくない情報であることは本人もわかるからです。
そして、本人にも問題があったことを理解しているからかもしれません。
それでもあえて、人間関係を理由として言うような人は、自分に問題があることに気づいていない可能性があります。
こういう人は、空気が読めないか、自分に絶対の自信を持っていると考えられます。
仕事でも相手の注意を無視して突っ走る傾向になり、扱い辛い存在になるかもしれません。
「前の会社では、やりたいことがあって入社したのに、やらせてもらえなかった」という理由は、本人にしてみれば、「自分はこんなに実力があるのに…」「こんなにアイディアがあるのに…」と思っているからこそ出る発言でしょう。
しかし、それは他人から見れば、過信でしかありません。
まず与えられた仕事をきちんと遂行して結果を残し、上司ともうまくコミュニケーションをとり、周りからも信頼されれば、やがては任される仕事量が増えて、やりたい仕事もできるようになっていくものです。
誰でも最初からやりたい仕事を任せてもらえることはありません。
「この人ならば任せても大丈夫そうだ」という信頼が生まれてはじめて、自分でやりたい仕事を持ち込んだり、選んだりする自由度が得られるのです。
ですから、このような理由で前職を辞めたと主張する人は、本人の考えが甘いということになります。
仕事を任されることがなかったとみることもできるので、能力が低く与えた仕事も満足にこなせない可能性もあります。
「前の会社は給料が低く、これ以上上がる可能性もなく、生活が苦しいのでやめた」という理由です。
一般的に、採用時にお金の話を自ら振ってくる人は避けた方がいいと考えられています。
それは、カネが第一で、仕事が二の次と考えている可能性があるからです。
その人を動かす原動力はお金であって、仕事によって何かを達成しようというような目標を持っていないかもしれません。
そういった人を採用しても、改革・変革を起こすことはなく、革新的な仕事をすることはありません。
成績トップを目指したり成果を残すことにやりがいを覚えたりすることよりも、目立たず・迷惑にならない程度に無難な成績を残そうとします。
それが平均以上であればいいのですが、得てして平均より若干下回る程度で収まる傾向にあります。
「前の会社えは、仕事が夜遅くまで続くことが多く、自分の時間を持つことができなかったので辞めた」という理由です。
多くの中小企業の働かせ方は酷いものです。
それこそ繁忙期には毎晩22時~23時を回ることも珍しくなく、月の残業時間は80時間を超えたり、残業として認めてもらえないいわゆるサービス残業を強いられたりすることも、残念ながらよくあることです。
前の会社の拘束時間が長くてきつかった、という退職理由の場合、あなたの会社でも同じことは起こりえます。
正直に、通常時は大体何時まで働き、繁忙期には残業が何時間になるのか、ということは伝えておいた方がいいかもしれません。
また、相手が定時に帰ることを望んでおり、会社としてその約束が土台無理であるならば採用は見送った方がいいでしょう。
「今までの仕事はマスターしたので、そろそろ次のステージに上がりたい」というような退職理由は、立派な内容に聞こえるかもしれません。
しかし、そういう理由であれば、同じ業種を選ぶことはその希望に沿うことにはならない可能性が高くなります。
また本気でこの理由を主張してくるのであれば、自分の能力を過信していると思われます。
もし、すごくすぐれた能力の持ち主であれば、あなたの勤める中小企業は、この人をとどめておくにふさわしい器になりえるでしょうか。
あなたの会社で気に食わないことがあれば、また「次のステージにいきたい」と言って辞めてしまうかもしれません。
そもそも次のステージに移行するほどの実力を備えているのかも怪しいものです。
もし採用担当者がこの人を採用したいと思ったのであれば、実際にはどのくらいの能力を持っているのか試験をする必要があります。
「勤めていた会社が潰れそうだったので転職を決意した」という理由は、一見すると正当な理由のように思えるでしょう。
しかし、どうして潰れそうだと思ったのかが重要になってきます。
経営者の手腕が低く、会社の業績も下がってきていて、このままでは潰れそうだ、という理由であった場合、その人は経営者批判をする人かもしれません。
会社の業績にはいい時も悪い時もあります。
たまたま数年悪い時が続いただけで、「この会社はつぶれそうだ」と決めつけてしまう人であれば、あなたの会社に入社したとしても、そのスタンスは変わることはないでしょう。
この人が、本当に潰れてしまった会社にいて、倒産した後に路頭に迷っていて就職先を探しているというのであれば、正当な理由になりえます。
それならばやむを得ない事情です。
ただし、辞めた理由が正当だからといって、その人が採用に足る人であるか否かは別問題です。
第一関門を突破した、というだけのことです。
ここまで同業種で働いていた人が社員募集に応募してきた場合に、どういう点に注意したらいいのか、代表的な検討ポイントを述べてきました。
この他にもいくつかの選定ポイントがあるので、ここからはその他のポイントについて述べます。
まず同業種で働いていたとしても、どの部署で何をしていたのか、ということを知らなければなりません。
その人が前職で配置換えされているのであれば、関わった仕事すべてを聞きだし、それぞれどのような成果を挙げたのか確認しましょう。
どの仕事でも大した成果を挙げていないのであれば、採用に足る人ではないかもしれないということです。
また、辞めた理由について、嘘を述べていることもあります。
自分にとって都合の悪いことは、誰だって隠そうとします。
聞く人を余程うまく納得させる自信がなければ、真実は話さないはずです。
もしも「○○という仕打ちを受けた」などと言う人がいた場合、それを真に受けて同情してはいけません。
実際には、きちんと仕事をしていなかったために罰を受けただけかもしれません。
本当のところは、違う立場の人の話も聞かなければわからないのです。
しかし、同業他社に電話をかけて、その人について確認することも難しいでしょう。
ですから、余程の技能を持っていると認められなければ、慎重に採用を検討しなければなりません。