さてこれまで、クレーム対応の心構えを色々と述べてきましたが、さらにもう一つ、別の角度からクレーム処理の心構えを述べます。
それは、「落ち込まない」ことです。
クレームをつける人は、怒り心頭に達していますから、誰彼構わずに怒鳴り散らすことも珍しくありません。
もし、あなたがクレーム処理係りではなく、たまたま電話に出てみたら、クレーム電話であったというときには、あなたにとっては非常に不幸な出来事でしょう。
しかし、だからといって、「私は関係ない」という態度をとることは許されません。
あなたもその会社の一員なのですから、少なからず責任を負っているのです。
会社で働くとは、そういうことなのです。
それでも、担当が他にいる場合は、丁寧に対応した後で、具体的な対応を任せることができます。
この場合、あなたにはさほどのダメージにはなりません。
問題は、あなたが担当だった場合です。
あなたは、怒りの的にならなければなりません。
そして、相手に対して怒ったり、適当に流したりすることも許されません。
あなたは、相手の話をよく聞き、よく謝り、そして解決方法を提示して、相手の気持ちをやわらげて、最終的に満足してもらえるところまで持っていくように、心がけなければならないのです。
相手に納得してもらうまでには、長い道のりであることも覚悟しなければなりません。
30分で済めばいい方だと思いましょう。
相手からの悪口雑言をひたすらに受け、それに対して反論することも許されず、ただ謝り続けるというのは、とてもストレスのたまる行為です。
慣れないうちは、精神的に大きなダメージを負うことになることになるかもしれません。
このようにストレスがたまったときは、電話を切った時に、すぐに周りの人に愚痴ってしまいましょう。
周りの人はあなたに同情してくれるでしょう。
愚痴るときは明るく愚痴りましょう。
「もう私はダメだ」「私がいけなかったんだ」というような落ち込んだ態度をとっていたら、あなたはストレスに押しつぶされてしまいます。
むしろ「こんなひどい言い方をされた」というようなことを積極的に愚痴りましょう。
これまで、「真摯に対応する」ことを推奨してきたのに、電話を切った後に、相手に非があるように周囲に愚痴るのは、矛盾していると思うかもしれません。
しかし、あなた自身がつぶれてしまっては、穏便な社会人生活が送れなくなってしまいます。
もちろん、電話ではきちんと応対して、その後の処理もこなします。
会社に対してもフィードバックも行い、今後の対策も共有した上で、最後に自分のケアをしましょう、ということです。
自分自身を落ち込ませないコツは、自分のせいと思わないことです。
また、自分の中にため込まないことです。
嫌だと感じたら、誰かと共有しましょう。
友人のように仲の良い同僚がいるならば、その人たちと共有すればいいし、部内で共有することができれば、今後の対策を練ることもできます。
社外の人と共有する場合には、重要な情報や個人情報が漏れないように注意しましょう。
要は、気持ちの持ちよう、考え方次第、ということです。
クレームを、自分に言われたと思うのではなく、会社全体に言ってきたものであって、直接自分に関係があるわけではないと思いましょう。
人によっては、誰かの悪口を言うのはよくないことだ、と頑なに思い込んでいる人もいます。
それは、とても立派なことです。
しかし、それで自分が精神的なダメージを負い、仕事が続けられなくなってしまっては元も子もありません。
どんなときでも、まず自分が生き延びることを考えましょう。
ただし、このように考えるあまり、クレーム対応自体を適当にやってはいけません。
まずクレーム処理、そして自分のケアなのです。
この順番を無視して、自分の身の可愛さだけで行動してしまうと、「わたしは関係ない」といういい加減な対応が相手に伝わってしまい、なおさらこじれることになってしまいます。
こじらせたまま他の人に電話を回してしまうと、その後のあなたの会社での立場に影響してきます。
「クレーム処理」→「自分のケア」という順番を守りましょう。