クレーム処理に関して、大きな問題となることは、そのクレームが正当なものであるのか、不当なものであるのか、です。
理不尽な要求に対しても、すべて正当なクレームと同様に対応していては、相手に付け込まれてしまい、いいようにむしりとられてしまいます。
以前、産地を偽装された食品を売ってしまったスーパーが、その商品を買ってしまったという申し出さえあれば、レシートがなくても返金に応じるという対応をしてしまいました。
すると、そのお店には、お金をほしい人が殺到し、当初仕入れた額よりも多い額を来店者に支払うことになりました。
果たして、この方法がよいクレーム処理だったといえるでしょうか。
もちろん、この場合、レシートをとっている人はそれほど多くないことも考えられます。
また、余計な身元確認などをすれば、誠実な対応とはみてもらえないかもしれません。
だからといって、性善説で人を考えても、相手が善人だけとは限りません。
まず、相手のクレーム内容が、明らかにこちらの過失によるものであるのかを見極めましょう。
そのためには、何が起こったのかを知る必要があります。
じっくりと相手の話を聞き、状況を知る努力をしましょう。
じっくりと聞くときには、相手の言うことが理解できずに、同じことを聞き返す場合もなります。
この聞き返す回数が多ければ多いほど、相手はイラついてしまいます。
ですからより丁寧な話し方、申し訳なさそうな雰囲気を出しつつ、相手の話を意図するところを解釈していかなければなりません。
相手の話を聞き、それが正当なクレームであると判断したのであれば、正しく金を遣いましょう。
例えば、買った製品が壊れていたという場合には、代替品を送ります。
こちらの過失によるものなので、このコストは当然あなたの会社が負担すべきものです。
ただし、このとき、問題のあった製品はできるだけ回収しましょう。
「お手数ですが、着払いで結構ですので、お送りください」と伝えましょう。
しかし、人によっては「そんな手間はかけられない」という人もいます。
そこで諦めてしまうと、もしかしたら、壊れていないのに、もう一台ほしいからクレームをつけている可能性もでてきます。
ですから、代替品と交換する場合は、必ず不良品を回収するのが条件になります。
さて代替品を渡す時、それにプラスして謝罪の品を渡すこともあります。
多くの場合、それは誠意と謝罪の意の表れであるため、相手の怒りを和らげます。
しかし、一方で「味を占める」ことにもなりかねません。
余計なコストを遣ったばかりに、最初は正当なクレームをつけていた人が、不当なクレーマーになってしまうこともあります。
ですから、謝罪の品を渡す場合であっても、高価なものや大量のものはやめておき、あくまでちょっとしたものにとどめましょう。
できれば、代替品以外は渡さずに、済ませましょう。
では、相手の言い分が不当なものであった場合は、どうすればいいのでしょうか。
アメリカでは、不当な言い分であったとしても、対処しなければネットに会社の評判を落とすような書き込みをされてしまい、大損害に発展するケースもあるため、正当なクレームと同様に対処することがあるようです。
その方が、コストとしては安くなるということのようです。
しかし、これこそがコスト至上主義とインターネットが生んだ弊害ではないでしょうか。
それなりのブランドを築いたものであればいざ知らず、まだこれからという知名度の低い商品である場合には、このようにインターネットが一種の脅しとなり、つけこまれやすくなります。
このような場合、いいなりになってしまうのは問題です。
そういったクレームには、一つ一つ丁寧に対応して、納得して引き下がってもらうようにしなければなりません。
そのようなことをしていると、時間がかかりすぎてしまい、無駄なコストが発生すると思うかもしれませんが、このように対応していれば、やがて「言っても無駄だ」という考えが浸透します。
そのうちに、不当なクレームの件数は減少するでしょう。
目先の利益だけを追ってしまうと、不当なクレームは一向に減らず、「言えば通る」という変な慣習ができてしまい、コストは増える一方になってしまうでしょう。
何事も近道はありません。
長い目で見て、行動するように心がけましょう。