ホーム心理テクニックを利用した交渉術ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック
ドア・イン・ザ・フェイステクニックは、相手の道徳観念に訴え、こちらの要求を受け入れさせてしまおうというものです。
まず最初に断られるであろう頼みごとを相手にします。
当然相手はその頼みごとを断るでしょう。
しかし断った瞬間、相手には「断って申し訳ないな」という罪悪感が生まれます。
この罪悪感を増やしたくない、なくしたいという思いから、次に頼まれたことは、断り辛くなります。
この心理をついて、最初に大きな頼みごとをして、断られたら要求の水準を下げて再度お願いをします。
ドア・イン・ザ・フェイステクニックでは、ドアを開けたらいきなり顔をつっこんでしまう、という手法です。
フット・イン・ザ・ドアテクニックの場合には、「小さな頼みごと」→「大きな頼みごと」の順番で、すべての頼みごとにおいて、相手の承諾を得ていきましたが、ドア・イン・ザ・フェイステクニックでは、「大きな頼みごと」→「小さな頼みごと」の順番で最初の頼みごとを断らせて、次の頼みごとを承諾させます。
つまり、2番目に要求する内容が、あなたが本来達成したい目的になります。
1番目は断られるための「わざとする」お願いです。
また、2番目にも1番目よりも小さいけれど断られそうな頼みごとをもってきて、3番目に本来の目的である頼みごとを設定してもいいでしょう。
ドア・イン・ザ・フェイステクニックでは、最初に断られるような大きな頼みごとをして、断られたら次に小さな頼みごと(本来の目的)を言います。
「10000円貸してくれませんか」→「1000円貸してください」
「一緒に旅行に行きませんか」→「食事に行きませんか」
「明日までに仕上げてください」→「3日後に伺います」
「毎日運動しよう」→「1週間に1度、運動しよう」
最初の頼みごとを断って、罪悪感を感じているうちに次の頼みごとをしなければ、ドア・イン・ザ・フェイステクニックは効果を発揮しません。
最初の頼みごとを断られて、一旦引き下がり、数日後に軽めの頼みごとをしたとしても、既に相手の中では最初の頼みごととの関連性が薄れてしまっているので、断ったことへの罪悪感がなくなってしまいます。
ドア・イン・ザ・フェイステクニックは、断られた次の瞬間、2番目の頼みごとをするというように、相手の罪悪感が消えないうちに次の行動に移さなければなりません。
もちろん、状況によっては、多少の時間を空けても構いません。
相手が思い出して罪悪感を再び感じるようにすればよいのです。
「なんで私がそんなことをしなければならないのだ」と、相手を怒らせるような要求を、最初の頼みごとでしてしまうと、罪悪感を生じさせるどころか、怒りによる敵愾心・対抗心を生んでしまいます。
本来、人前で怒るということはいいこととはされていません。
ですから、人はなるべく怒らないように穏便に済ませようとします。
断るにしてもやんわりと断るものです。
しかし、一度怒ってしまったら、その時点で恥も外聞もなくなり、開き直ってしまいます。
このように感情的になってしまうと、「この人の話は聞く必要はない」という回路がその人の頭の中でできあがってしまいます。
いかに大げさな頼みごとを設定しようとも、それは相手を怒らせない範囲でなければなりません。
人は、何度も同じことを続けていると、慣れてしまいます。
最初の頼みごとから本来の目的である頼みごとに到達するまでに、4つ5つと、複数の頼みごとを設定してしまうと、相手は、あなたの本来の目的の頼みごとに到達するまでに、断り慣れてしまいます。
そうなると、何をお願いしても機械的に断れるようになってしまいます。
つまり、「この人の頼みごとは聞く必要はない、全部断ってよい」という認識ができてしまうということです。
こうなってしまうと、もはや、ドア・イン・ザ・フェイステクニックは使えません。
そうならないように、頼みごとは2つか3つにしておくと同時に、普段から、自分が相手にどのようにみられているかも考えて、このテクニックを使いましょう。
断り癖をつけられないようにするために、ドア・イン・ザ・フェイステクニックに入る前の、雰囲気づくりも大切です。
相手と談笑するなどして、「断ったら罪悪感が生まれる」ような人間関係を作っておくと、うまくいく確率があがります。
では、ドア・イン・ザ・フェイステクニックを、相手が使ってきた場合は、どのように対処すればいいでしょうか。
これは、そのほかの心理テクニックにも共通していえることですが、まずは「ドア・イン・ザ・フェイステクニック」という心理テクニックが存在することを認識することです。
このページを読み、その存在を知ったのであれば、その場限りで忘れてしまうのではなく、こういうテクニックが存在するんだということをしっかりと覚えておいてください。
そして、忘れないために、できれば意識的に何度か使ってみましょう。
そうすれば、この心理テクニックの使い方を理解できるようになるし、その効果も身をもって知ることができます。
相手が同じことをしてきた場合に、「ドア・イン・ザ・フェイステクニックを使っているな」と思い出すことができます。
ところで、この心理テクニックのポイントは、相手の罪悪感を利用することです。
しかしよく考えてみると、最初の頼みごとを断ったからと言って、次の頼みごとを引き受けなければならない理由はありません。
相手が何かをしてくれていて、そのお礼のためにするのであればまだしも、相手はあなたに何もしてくれていないのに、なぜ次の願い事を聞き入れなければならないのでしょうか。
このように考えて、「いわれのない罪悪感」にとらわれないようにしましょう。
そこさえわかっていれば、きっぱりと断ることができるでしょう。
また、相手との交渉をする場面においては、一方的に断るのではなく、相手の要求を受け入れつつも、こちらの要求も盛り込ませるという駆け引きが行われることもあります。
こういう場面では、ドア・イン・ザ・フェイステクニックの仕掛け合いをすることもあります。
つまり、相手がドア・イン・ザ・フェイステクニックで、最初に法外な要求をしてきたときに、こちらは当然断ります。
すると、今後は要求を下げてきたとします。
このときに、あなたは法外に下げさせた要求を相手に突き付けます。
相手も当然断るでしょう。
こうして、互いに相手に罪悪感を芽生えさせようとして、攻防を繰り広げます。
あなたは、相手の2番目の要求よりも自分位有利な水準の要求を提案して、それを呑ませるように誘導するのです。
ドア・イン・ザ・フェイステクニックは、フット・イン・ザ・ドアテクニックと掛け合わせて使うこともできます。
まず、本来の目的である、大きな頼みごとをします。それが断られたら、受け入れられるであろう小さな頼みごとをします。
うまくその頼みが受け入れられたら、再度本来の目的である頼みごとに水準を引き上げて、お願いして、承諾させるのです。
これは、ドア・イン・ザ・フェイステクニックによって生じた罪悪感を利用して、小さな頼みごとを承諾させ、その承諾を足掛かりとして、フット・イン・ザ・ドアテクニックで、本来の目的である、当初の大きな目的を果たす、という方法です。
この場合、同じことを2度・3度と繰り返していくうちに、承諾してもらえるようになるときもあります。
つまり、「ドア・イン・ザ・フェイステクニック→フット・イン・ザ・ドアテクニック」という連携でも断られてしまったときに、ここで諦めずに、日を改めてもう一度同じ構成で頼みごとをしてみるのです。
何度も繰り返すと、罪悪感と「これくらいならいいか」という気持ちとで、相手が折れることがあります。
このように、心理テクニックは単体で使うのもいいですが、他のテクニックと複合的に使うとその効果を高めることができます。