あなたはモノを売り込むときに、自分のことばかり考えていませんか?
モノが売れさえすれば、相手はどうなっても構わないという考えが生むものは、詐欺行為でしかありません。
あなたがやるべきことは、相手の立場に立って考えることです。
相手が何に悩んでいて、何をほしいのか。
それを理解しないで、上司に売ってこいと言われたものだけを売りつけようとしているだけでは、いつまでたっても相手に信用してもらえません。
しかし、あなたの行動基準を「おもいやり」に設定すると、営業活動においては、各場面において、うまく行動することができます。
では、具体的に思いやりを持って行動するとはどういうことか、以下のケースについて考えていきます。
電話で約束を取り付ける際に、あなたは、とにかくどんな形であれ、約束を取り付けられればいいと思っていませんか。
電話では「ご挨拶だけ」と言っていたのに、実際に会ってみたら延々と商品説明をしたり契約を迫ってみたりする営業マンは少なくありません。
相手はそういう営業マンばかりを相手にしているので、あなたがそういう営業をしてしまうと、「またか」と思われてしまいます。
まず考えなければならないことは、相手があなたと会うことで、どんなメリットがあるのか、ということです。
「とりあえず名刺交換だけでも」という決まり文句を使っても、営業を受けてくれる人は、営業を受けることにあまり慣れていないか、まったく取引などするつもりもない人のどちらかです。
また、以下のような質問を、アポを取り付ける切り口にしようとする人も多いのですが、これらも「特にありません」と言われてしまったら、諦めざるを得ません。
さらに、必要性を説くような質問をする人もいます。
しかし、これも何度か訪問を受けて慣れてしまうと、「はい導入しています」「入れたばかりなので見直すことは今のところありません」「現状では検討していません」と断られてしまいます。
電話でアポを取り付けるときに、予めあなたが考えておくべきことは、「もし、自分がこのように電話営業を受けたら、何と言って断るだろうか」ということです。
相手の気持ちになって考えてみましょう。
そして、断られないようなアポの取り方は、どんな言い方だろう、と考えるのです。
当然ですが、電話を掛ける企業が、どのような会社で、自分が売り込もうとしている商材が必要と思われるものであるかどうかも考えておきましょう。
挨拶をするだけとはいえ、ある程度商材の説明も必要ですが、零細企業に、大企業で導入する商材を売りつけようとしても、土台無理な話です。
初回訪問時には事前に準備して臨みましょう。
間違ってもぶっつけ本番はやめましょう。
相手はわざわざ、あなたと会うために時間を空けてくれているのです。
それに対し、何も準備しないで出向くというのは失礼以外の何物でもありません。
また、「準備」の内容を勘違いしないようにしましょう。
あなたは、どこの企業でも同じ自己紹介を言い、同じ資料を見せ、同じアピールをすればいいと思っていませんか?
そのための準備をすればいいのだ、と。
準備には2種類あります。
まずは基本的な部分です。
これは、どこの企業に行くときでも必ず用意しておくベースとなるものです。
そして、もう一つは、訪問先の企業に特化した準備です。
基本的な準備には、身だしなみも含みます。
まず、相手に嫌がられない服装、身のこなしを身につけましょう。
印象は見た目で決まります。
相手に不快な思いを持たれてしまったら、もう会ってはもらえません。
臭いにも気をつけましょう。
体臭がきになるのであれば、少し香水をつけることも検討しましょう(ただし、つけすぎは逆に嫌がられるので注意してください)。
次に、初回訪問時で必ず話す内容を考えます。
まず、相手は何も知らない状態で会うわけですから、会社概要は説明できるようにしておきましょう。
会社案内のパンフレットを持っていくことは当然のことです。
パンフレットを持っていかないで、口頭で説明しただけでは、すぐにあなたの存在など忘れてしまうでしょう。
会社案内については、そこに書いてあることだけをページを追って説明するだけでは、あまり意味がありません。
それならばあとで読めばいいのです。
必要な情報を取捨選択することと、そこに書いていない重要な情報をプラスアルファして、口頭でアピールしましょう。
自分の会社の商材についても、熟知していて当然です。
もし、コンピュータソフトや自分で扱える商材であれば、ためしに使ってみるのが一番です。
実を持って経験したことを伝えるのはあなたにとっても楽でしょうし、相手にも伝わりやすくなります。
あなたが商材を使ったことがないのに、「これはいい商品です」と言っても、「でも使ったことはないんでしょう?」と不信感を持たれます。
ただし、商材のことを熟知しているからといって、相手が求めていなければ、初回に説明する必要はないということも肝に銘じておきましょう。
できれば、相手が質問しそうなことを予め想定しておいて、問答集を用意しておきましょう。
訪問時にされた質問を覚えておいて、次回別のところに訪問するときのために、質問集をストックしていくのも一つの手です。
これまで述べてきたことは、一般的なアピールです。
初回だから、これだけでもいいのではないかと思うかもしれません。
多くの営業マンは、以上のような基本的な準備による説明を一通りした後、「質問タイム」に移ります。
「質問タイム」とは、相手から注文を取ろうとするための突破口とするべく設けた時間です。
「何かお困りのことはございませんか」
「~を今後導入するご予定はございませんか」
このような質問をしても、初対面の人に、簡単に応える人はいません。
答えたとしても、だから導入するということにはなりません。
初回で簡単にこのような情報を引き出せたとしたら、それは、以下のいずれかのパターンだと思われます。
1番目のタイプは、決定権もなければ上司を説得する力もありません。
ですから、あなたが幾ら注文を取ろうとしても、彼の上司が認めません。
また、幾ら頼んでもその上司に会うことはできないでしょう。
2番目のタイプは、営業マンの応対に慣れています。
一応言うには言うけれど、契約はしません。
いずれにしても、初回から情報を出してくる人は、誰にでも同じように接しているし、そう簡単に契約してくれません。
ですから、このような質問はあまり意味がありません。
ただし1番目のパターンの場合、あなたがすぐに契約させようと考えなければ、今後の付き合いのために、次回訪問する材料をつくることができます。
色んな話を聞き出しておいて、次回はその話を中心にまたいろんな話を聞き出す、というようなことを繰り返して、記憶に刷り込ませることができます。
あなたは、何回も会ううちに、相手が自分を気に入ってくれるように仕向けなければなりません。
「また、あの人と会わなければならない」と嫌がられるような話をしてはいけません。
さて、訪問先の企業に特化した準備とは、相手の企業研究から始まります。
あなたが訪問する企業に興味を持ってください。
できれば、相手の製品を使ってみてください。そして、いいと思う点を見つけてください。
批判点があったとしても、それは言ってはいけません。
相手を不快にしたらおしまいです。
批判をしても許される関係になるには、当分先のことと考えてください。
相手が「この商品どう思う?」などと、質問をしてくるような関係になれれば、そのときには批判点を述べてもいいでしょう。
また、話題が豊富なことも大事です。
相手の業界や、それに関係する国内・国際情勢、政治、経済の問題などの知識も持っておくと、話に厚みが出ます。
あなたと話すことで勉強になると思わせることができれば、また会ってくれる可能性が増えます。
ただし、知識についても、やたらとひけらかすのはよくありません。
相手の業界で、当然知っているであろうことを、万が一相手が知らなかった場合、恥をかかせてしまいます。
話題になるには、受けるネタというのも必要です。
相手がやってみたくなる情報や、笑える話を織り交ぜて、相手を楽しませるというエンターテイメント性も持ちましょう。
話題が豊富になれば、あなたは仕事だけでなく、私生活でも面白い人になることができます。
まずは「おっ、なんだか安定感のある人だな」と思わせるように、様々な知識、情報を仕入れておきましょう。
ここからは、途中経過を省いて、最終的に契約に漕ぎ着けることができた話に移ります。
契約したら、それで終わりでしょうか。
新規顧客を開拓する方が、既存の顧客を大事にすることより重要だと思いますか。
答えはノーです。
一度獲得した顧客は、あなたの味方になりつつあります。
あなたを信頼し、他にも何かあれば注文しようと考えてくれている可能性もあります。
その思いを裏切ってはいけません。
大きな注文はそうあるものではありません。
一度注文してくれたからといって、すぐに次の注文は来ません。
しかし、そこで関係を断ち切ってしまってはいけません。
たとえその後1年間注文がなくても、あなたが1カ月に1回訪問をしていれば、相手はあなたのことを強く覚えていてくれます。
そして、注文したときの信頼感が薄れることはありません。
何かあれば、真っ先に連絡をくれるでしょう。
目先のことにとらわれて、1年注文がなかったら、もう会いに行くのは交通費の無駄だと決めつけないでください。
もし、あなたが異動することになったら、自分とは関係なくなたっと思わずに引き継ぎましょう。
そして、その営業マンには、必ず月に1回は訪問して、雑談でもいいからしてこい、とアドバイスをしておきましょう。
あなたが異動した場所や部署に関連のある人を、見込顧客として紹介してもらえるかもしれません。
あなたが誠意をもって相手のことを第一に行動すれば、それは必ず相手の心に届きます。