多くの人は、誰かから指摘を受けると、それが正しい指摘であってもむっとしてしまいます。
そうでない人ももちろんいますが、大半の人は多かれ少なかれ気分を害します。
特に、その仕事について、自分がエキスパートだと自負している人に対して「こうした方がいいのではないか」と仕事のやり方の改善を促すアドバイスや指摘には、敏感にそして過剰に反応します。
「やったこともないくせに、偉そうに口出しをするな」というわけです。
あなたも、少なからずそういった経験があるのではないでしょうか。
なければいいのですが、多少でもそういう側面を持っているならば、指摘されたときに「怒り」の反応を見せてしまうことがあります。
しかし、「怒り」の反応というものは、穏便な社会人生活を送るうえでは、あまり好ましいものではありません。
もちろん、まったく怒ってはならないわけではありません。
ときには怒る姿勢を見せておかなければ、「あいつには何を言っても構わない」と思われてしまい、逆にストレスを溜めることにもなりかねません。
しかし、無用な怒りはできるだけ避けるに越したことはありません。
怒りは自己防衛反応でもあり、ストレスを軽減する作用があり、ときには必要です。
しかし、怒るのが適当ではない場面で怒ってしまうことは望ましいことではありません。
常に怒っていると、相手は慣れてきて以下のような行動に変化します。
同僚や先輩から「何を言っても怒るだけだから話すのはやめよう」と思われてしまったら、あなたは会社で孤立していきます。
孤立した人を守ろうという人は少ないでしょう。
厄介者は一番先に見捨てられるものです。
「怒りには怒りで対抗しよう」と考える人もいます。
負けん気の強い人は、あなたが怒りの態度を示したら、それを力でねじ伏せようとしてきます。
その結果、あなたが勝った場合は、結局「必要なこと以外は話すのはやめよう」という接し方をされるようになります。
反対に、あなたがその争いに負けた場合、今後はその人から常に嫌な態度で接せられるかもしれません。
いずれにしてもあなたは余計なストレスを抱えることになります。
また、怒ってばかりでとっつきにくい人は、経営者にも嫌われます。
「怒ってばかりで仕事をきちんとしない」という悪評がたつかもしれません。
そうすれば、ちょっとミスをしただけで目をつけられたり、部署を異動させられたりして、何とかして今のポジションからどかそうとしてきます。
怒りの感情を抑えてお礼を言ってみると、相手に与える印象は変わります。
以下に3つのケースをお礼で返してみるとどうなるかを考えます。
誰かがあなたの知っている情報を、あなたが知らないだろうと思って「教えてあげよう」という態度で情報提供してきたとします。
そのとき普通ならばイラっとするかもしれませんが、そこでお礼を言ってみましょう。
それも「ありがとうございます」だけでいいのです。
でも、相手に知らなかったのだと思われるのは癪だというのであれば、「あっ、知っていますよ。
~のことですよね。ありがとうございます」と、知っているということは伝えておきつつ、お礼もプラスしましょう。
こういうときに怒ってしまうと、次に重要な情報をその人が見聞きしたときに、教えてくれないかもしれません。
しかし、怒らずにお礼を言っておけば、次も教えてくれるでしょう。
しかも、その情報があなたが本当に知らない重要な情報かもしれません。
間違いを指摘されたときは、明らかにこちらのミスですから、怒ること自体が間違っています。
しかし、人間というものは、自分の過ちを他人から指摘されると、過剰に防衛反応をしてしまうものです。
明らかに相手の指摘が正しい時は、怒りを感じたとしてもその感情をぐっと堪えて、お礼を述べましょう。それが最も正しい行動です。
それでも頭にくるような言い方をされて耐え難いときには、相手側の言い方にも問題があるので多少の怒りをにじませてもいいかもしれません。
しかし、できればそんなときほど、笑顔で「ありがとうございます」と言えるのが理想です。
最も腹を立てやすいのが「あなたの仕事を知らない人に、あなたの仕事のやり方をアドバイスされること」です。
誰でもそうだと思いますが、その仕事に携わっていない人から、「こうした方が効率がよいのでは」と指摘されることは、「よく知りもしないで何を言っているのだ」と怒りを誘発させます。
そのアドバイスについて、既に検討したけれども事情があってできない、という場合には、やんわりと素直にその事情を述べましょう。
そして「ありがとうございました」とお礼を一言付け加えておきましょう。
そのアドバイスが的を射ているときは、それを素直に受け入れることが最もいいことです。
しかし、受け入れる気にならない場合でも、「ありがとうございます。検討します」と、お礼を言ってそのアイディアを一旦引き取っておきましょう。
このように、多くの場合はお礼を言うことで、人間関係を保つことができます。
相手が親切心でやっていることに対しては、怒りで対抗するのではなく、礼儀で持って受け入れることが重要だ、という話です。